切られたイチョウの狸が運ぶ掛け声
どんな伝承か
戦前、徳島市寺島には徳島高等小学校があり、校庭に銀杏の大木が立っていた。戦災で校舎が焼けた後、その木は切り倒され、石井の人が買い取って適当な長さに切って運び去った。ところがある晩、皆が寝静まった頃に「エンヤラ、エンヤラ」と木を運ぶ掛け声と、ゴトゴトと木の動く音が聞こえた。奥さんと子供が見に行くと声は出来島の方へ遠ざかり、姿は何もない。戻るとまた始まり、主人が確かめに出ても向こうへ去っていくばかりだったという。銀杏の下に住んでいた狸のしわざであろうということになった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。