稲荷橋から見た行水する娘
どんな伝承か
三好郡三加茂町(現東みよし町)に伝わる話。今から六十年ほど前、昭和の初めの頃、和霊神社(三好町美濃田)の祭りの晩、若い衆五、六人が参詣の帰りに稲荷橋の上で涼みながら話していた。ふと西の方を見ると、伊原のケンドヤ(現伊原モータース)の軒下で、きれいな娘が裸になって行水を始めた。やがて娘は浴衣を着て帯を結び、提灯をさげてにこにこ笑いながら近づいてくる。だが夜中の十二時頃、二丁も離れているのに着物の柄から顔の表情までよく分かる。「これは狸だ」と皆で走って行くと、村井の家のあたりでぱっと消え、いくら探しても何も見つからなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。