長泉寺の藤陰で狙われた女
どんな伝承か
大正年間の夏の昼下がりのこと。長泉寺の近くへ田の草取りの日傭に来た女三人が、寺の藤の木陰で昼寝をしていた。真ん中に横になっていた女がくすくすと笑い続けるので両脇の二人が目を覚まし、一人が悲鳴を上げて指さした。見ると、笑っている女の裾から蛇の尾が動いている。当時の百姓女は腰巻きを直に用いていた。気丈な一人が揺り起こしても目覚めないので腰巻きをまくると、蛇は女の陰部に頭を突っ込んでいた。尾を踏んで引いても抜けなかったが、女が目を覚ました途端に軽く外れた。祟りを恐れて山へ逃がしたが、数日後、行水をしていると蛇が盥を這って向かってきたので、男衆が打ち殺した。以後、女は半年ほど正気に戻らなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。