掛け声だけで動いた山門の大木
どんな伝承か
明治のころ、官軍に焼かれた真如寺を建て直すことになり、山門を建てるための材木を運ぶ必要が生じた。木があまりに大きく、土地の者を一〇人も二〇人も頼まなければ運べないほどだったという。ところが寺の和尚は、面倒だから自分が運ぶと言い出し、夜にばかり一人で作業をした。和尚が大きな声で「よーいこら」と掛け声をかけると、ズルズルと音を立てて、誰も触れていない長い材木がひとりでに動いたという。和尚は夜ごとそれを繰り返し、とうとう独力で材木を運び終えてしまった。語り手は、なぜそうなったのか分からないと語り納めている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。