馬頭観音の橋に立つ亡き妻の姿
どんな伝承か
語り手の板橋すみが三つのとき母が亡くなり、父は赤ん坊と幼い娘を抱えたうえ、長男の兵隊検査も重なって途方に暮れていた。ある日、出入りしていた三丁目の田中屋へ用足しに行った帰り、馬頭観音のそばの橋まで来ると、死んだはずの女房が手ぬぐいをかぶり、すみを背負って立っていて、「ちゃん、どこへ行っただか」と呼びかけてきた。父は三丁目へ行ったと答えながら、ムジナが自分の心を見抜いて出たのだと気づき、急いで煙草に火をつけると、姿はたちまち消えた。ムジナは煙草を嫌い、人の心を悟るのが実にうまいのだと語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。