大鏡に映った自分を母の幽霊と見た妻
どんな伝承か
明治の初め、横浜のある商館で働くボーイの妻おたいは、亡くなった母親に瓜二つの容貌をしていた。母は風邪がもとで亡くなり、その翌年のある日、おたいが夫の代わりに部屋の掃除をしようと戸を開けると、正面に若返った亡き母の姿が箒とはたきを持って立っていた。驚いたおたいが大声で叫ぶと、館主が駆けつけて様子を見て、「これは昨年イギリスから送られてきた大鏡だ。母によく似たあなた自身が映っただけで、母上の幽霊ではないよ」と諭し、ようやく納得させたという。出典は篠田鑛造『明治百話』とされる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。