電灯を買って帰ろうとした奥山の人
どんな伝承か
大正六年、高岡郡越知町に初めて電気がついた。田村屋という支度屋があり、豆腐と揚げの煮込みが旨いと評判で、飯食いや一杯飲みがよく来ていた。夕方に電気がつくと、『こりゃどうしたことや、ひとりで灯がついた』『便利になったもんよ、ランプのホヤの掃除もいらんし、石油も買わんでよい』と口々に話していた。そこへ奥山の人がやってきて『わし、一つ買うていこ』と言った。電線が来ていない奥では役に立たないのに、それを知らないものだからと、みんなが笑ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。