懐中電灯をナショナルと呼ぶ村
どんな伝承か
昭和三十五年頃、新潟県北魚沼郡小出町虫野に下宿していたときのこと。おばあちゃんに「タナにあるナショナルをとってくれ」と言われ、何のことか瞬時には分からなかったが、懐中電灯のことであった。見ると大きな文字でナショナルという社名が書いてある。その村では全体がそう呼んでいたという。当時は車の方向指示器をアポロと社名で呼ぶのが常識であり、ごく最近ではコピーのことをゼロックスと呼ぶのだから、人を笑えないと語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。