母と妹が同じ夜に見た兄の夢
どんな伝承か
埼玉県草加市高砂で、昭和十九年、戦時下のこと。姉一家や実母と同居していた著者の実兄・内田良隆は、その年、勝田部隊に所属して南方へ出征した。出発に際し、母のことをくれぐれも頼むと言い残していった。七月頃のある夜、母と著者は同じ夜に兄の夢を見た。著者は、ふすまを開ける音で目を覚ますと、兄が紺の背広姿で無言で立っている夢を見た。母は、姉が兄の戦死の知らせを隠しているのが口惜しいと泣く夢だったという。その後およそ一年たって戦死の公報が届き、兄は一年前の七月にすでに死んでいたことが判明した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。