芳に追われた源坊の魂の火
どんな伝承か
明治初年のこと。佐岡の芳という男が、夜道を一人急ぎ足で歩いていると、道ばたに蛍の火の何倍もある火が落ちていた。芳が好奇心からその火を追い立てると、火はスッと横に転んで丸木橋をするすると渡り、源坊という者の家の庭へ転び込み、縁へ飛び上がって障子の破れ穴からコロリと座敷へ入っていった。不審に思って耳を澄ますと、内から亭主の声で『えらい夢を見た。大滝の方へ遊びに行ったら西の芳が来かかり、いきなりわしにキセルを突きつけてきたので逃げ出したが、いくらでも追いかけてくる。ようよう逃げてきたが、しんどかった』と夫婦で話していたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。