お姫さまが膳を貸した椀貸の岩
どんな伝承か
大野郡富田村土布子には、岩の名前そのものを「椀貸の岩」と呼んでいる岩がある。この岩には美しいお姫さまが住んでいて、村の家で客ごとなどがあるとき、前もって願っておくと、その日にお姫さまが岩から現れて膳椀を貸してくれた。ところがある人が十二枚の膳を借り、悪い心を起こして一枚を手元に残し、十一枚しか返さなかったため、それからは貸してもらえなくなったという。著者は、このお姫さまを、占いや神寄せに携わった身分の高い女性「御前」の仲間だろうと見ている。
原典より
美しいお姫さまがこの岩に住んでゐて、村の家に客事などがある場合、豫め願つておくとその日には、お姫さまが岩から現はれて、貸してくれた。—— 福井縣鄕土誌 民間傳承篇(中塩清之助(編)・福井縣鄕土誌・1939年(昭和14年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
福井縣鄕土誌 民間傳承篇(中塩清之助(編)・福井縣鄕土誌・1939年(昭和14年))
『福井縣鄕土誌 民間傳承篇』は、福井市立実科高等女学校の郷土誌第二輯として教諭中塩清之助が編み、昭和十四年二月付の学校長金岡正孝の序を巻頭に置く。丹生郡の名、哭女、越前萬歳、仏の舞、幸若舞、猫塚、隠れ里、子育て幽霊、愛発の関、弁慶譚、八百比丘尼、水の神女譚を、古文献や他地方の類例と照らして論じる。生徒が集めた県下の昔話は類話をA・Bなどに分けて並べて解説を付し、校正者大村四朗の跋を添える。