鱗三枚を残して沼へ入った道阿上人の母
どんな伝承か
『加沢記』は奇異の物語として次の話を載せる。善導寺二代目の住持道阿上人の母は、明徳四年四月八日、上野国六の宮榛名権現に参詣し、伊香保の沼を眺めているうちに、たちまち巨大な大蛇となって沼へ飛び込んだ。知らせを聞いた道阿が沼のほとりへ赴くと、母は沼の中から現れて蛇の鱗三枚を上人に渡し、善導寺がある限り水は自在であろう、これまでだと告げて沼へ戻った。上人は母が蛇道に堕ちたことを悲しみ、三七日のあいだ沼端で供養して石塔一基を建てた。塔には明徳四年四月八日の彫り付けがあり、この因縁で寺をどこへ移しても水に困ることはないという。昌幸卿をはじめ相伴の人々はこの物語に感じ入ったと記される。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
群馬県史 資料編 27(群馬県史)
『群馬県史 資料編 27』は、群馬県の県史の資料編の一冊で、収めるのはその「第三章 伝説」である。伝説の定義と分類、『神道集』や近世の地誌から明治以降の郡村誌・伝説集に至る県内の調査の歩みを述べ、赤城と日光の神戦、赤堀道元の娘と木部姫の入水、文福茶釜、羊太夫、弘法伝説などを群馬の伝説の特色として論じる。続いて代表例を自然的・社会的・信仰的伝説の三つに分け、各地の口承と古記録を伝承地を添えて並べる。