一郷山の砦の楠門と焼けた宝蔵
どんな伝承か
多野郡吉井町多比良の一郷山にあった砦について、『輪軍記』上巻はこう記す。城の南門は楠門と呼ばれ、この所には宝物を納めた蔵が十五、六もあった。楠の老木があったが、火にあって残らず焼けてしまい、水を打つ者もいなかった。火は二十日ほども燃え続けたので、この所をおき中というのだという。信玄の陣所まで残らず焼失し、目も当てられぬありさまであった。この城には「朝日さす夕日もてらす此城に宝ぞとまる楠の下」という歌が一首伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
群馬県史 資料編 27(群馬県史)
『群馬県史 資料編 27』は、群馬県の県史の資料編の一冊で、収めるのはその「第三章 伝説」である。伝説の定義と分類、『神道集』や近世の地誌から明治以降の郡村誌・伝説集に至る県内の調査の歩みを述べ、赤城と日光の神戦、赤堀道元の娘と木部姫の入水、文福茶釜、羊太夫、弘法伝説などを群馬の伝説の特色として論じる。続いて代表例を自然的・社会的・信仰的伝説の三つに分け、各地の口承と古記録を伝承地を添えて並べる。