製錬所の煙で枯れた樫と全滅した蚕
どんな伝承か
公害がひどくなったのは昭和二六年に製錬所が増設されてからだという。うちは東邦亜鉛の東側七〇〇メートルのところだが、工場側に風よけとして一〇本ばかりあった樫の木がみな枯れてしまった。昭和三〇年ごろのことで、どれもひと抱え以上ある大木だった。工場から出るガスでトタン屋根が腐って剥がれ、煙が入って二階の蚕が全滅したこともある。煙を浴びると蚕は一晩で死んだ。じゃがいもは肥料をたっぷり入れても芋ができず、花が咲いて実がなるだけだった。さつまいもも花ばかりで芋はつかず、畑には草も生えなくなり、いちょうやもみじは夏に二、三度紅葉して枯れてしまったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。