イタチ池から昇った九十間の蛇
どんな伝承か
明治九年七月七日、龍が天に昇るのを見届けたという上申書が残る。筑前国新入村のイタチ池から大蛇が天へ登ったという。午後一時過ぎ、役所で七人が執務していたところへ区夫の平助が門外から駆け込み、蛇が天へ登ると告げた。一同が外へ出て乾の方角を仰ぐと、空一面を白雲が覆うなか灰黒色の叢雲があり、そこから蛇の形がはっきりと垂れていた。上半分は雲に霞み、下半分はうごめき、長さはおよそ九十間、尾の先は地上三十間ほど。胴幅は雲際で三尺、尾先は一尺五寸であった。風も雨もないのに叢雲だけが激しく渦を巻き、五分ほどで蛇形は雲へよじ登り、五十分後には行方が知れなくなった。区長の末永茂正が県令の渡辺清へ上申した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考・昭和〜平成)