女池に頼まれて撃った男池の蛇
どんな伝承か
那留ヶ野には昔ふたつの池があったが、食糧難の頃に埋められたという。この那留に鉄砲の下手な猟師がいて、暮らしが苦しかった。やけになって寝ていると、若く美しい女が夢枕に立ち、自分は女池に古くから住む大蛇だが、よそから来た悪い大蛇に追い出されそうなので、明け方に水面へ鎌首をもたげる蛇を撃ってくれ、礼に百発百中の力を授けると告げた。翌朝、猟師は絡み合う二匹を見、残った一匹を撃った。手負いの大蛇の生ぬるい息を首筋に浴びながら中津屋へ向かう峠まで逃げ、走りざまの弾でようやく仕留めた。以後は百発百中となったが、撃ったのは実は古くから住む良いほうの蛇で、男池の蛇の罰で猟師はやがて目が見えなくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。