山賊が斬った旅人は二村山の石地蔵
どんな伝承か
沓掛町、旧鎌倉街道が越えていく二村山の高みに、一体の地蔵が立つ。昔この山を根城にした山賊は、通りかかる旅人を手にかけては金品を奪っていた。ある晩のこと、日の暮れた山かげの道で、賊はまた一人の旅人に襲いかかった。相手は少しも騒がない。黙って懐の金品を渡すと、澄みきった瞳でじっと賊を見つめた。その眼差しは闇のなかでも鋭く、胸をえぐられるように感じた賊は、振り払うつもりで腰の山刀を抜き、袈裟がけに斬りつけた。ところが、その瞬間なぜか涙がこみ上げてくる。黒く倒れた体を抱き起こそうとした賊は、思わず声をあげた。旅人と信じていたのは、二村山の地蔵堂に古くからまつられてきた石の地蔵尊だったのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
豊明市史 資料編 5 (民俗編)(豊明市史)
『豊明市史 資料編 5 (民俗編)』は、豊明市の市史の資料編のうち、民俗編の第一節「伝説」を抜き出したものである。栄町・沓掛町・大久伝町・新田町などに残る塚・地蔵・観音・清水・古木にまつわる言い伝えを、所在地や大きさ、ご利益とともに記し、旧鎌倉街道沿いの十三塚と狐、二村山の身替わり地蔵、織田信長にちなむ鷺の森などを含む。じゅんてん観音から市場地蔵まで二十一の項目に小見出しを立てる。