新酒を買いに来た酒飲み弁天
どんな伝承か
昔、間山に大きな造り酒屋があった。新酒を売り出したある日の夕方、美しい娘が一人で小さなひょうたんを差し出し、新酒がほしいと言った。こんな小さな器ではたいして入るまいと小僧が少しずつ注ぐと、一升を超えてもまだ入る。娘はそれで結構ですと代金を払って帰り、翌日もその翌日も夕方になると同じ器を持って現れた。いぶかしんだ小僧が後をつけると、娘は人里を離れて山道へ入り、池のほとりでふっと消えた。そこには弁天さまがまつられていた。以来その酒屋では、新酒ができると一番出来のよい酒を麓の池の酒飲み弁天に供えるようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
長野県史 民俗編 第4巻 3 (北信地方 ことばと伝承)(長野県史)
『長野県史 民俗編 第4巻(三)北信地方 ことばと伝承』は、長野県史の民俗編のうち北信地方の伝説の章を抜き出したものである。植物・石・水・塚・坂と峠・山・沢と道・城と屋敷・田と原・地蔵や観音・社寺・地名・禁忌の順に、条ごとに採集地を添えて短い伝えを並べる。戸隠の鬼女紅葉、黒姫と大沼池の大蛇、久米路橋の人柱、秋山郷の平家伝説など、善光寺平から奥信濃にかけての土地に結びついた話が多い。