黒姫を背に飛び去った大沼池の黒龍
どんな伝承か
信濃国中野の鴨が岳一帯を治めた高梨政守の娘黒姫は、花見の宴で寄ってきた白蛇に盃を与えた。その夜から若武者が夢に現れ、やがて湯の山の奥にある大沼池の黒龍と名のって城を訪れ、姫を妻にと百日通い詰める。政守は、馬で城を二十一回まわるのに遅れずついて来られたら許すと約し、ひそかに刀や槍を逆さに植えさせた。黒龍は傷だらけで龍の正体を現しながらも回りきったが、政守は約束を破って追い払う。怒った黒龍が嵐を起こし、濁流が城と村をのみ込むと、黒姫は人々を救うため鏡を天へ投げ、黒龍の背に乗って去った。鏡の落ちた山が黒姫山だという。
原典より
鏡が落ちた山は、信濃の国でも、とくに山容が美しく、人々はこれをあおぐ度に、美しい姫の容姿を思い浮かべた。—— 日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年))
『日本の妖怪伝説』は、小笠好恵が各地に伝わる奇談・怪談を読み物にまとめた伝説集で、序は昭和四十一年五月付である。浅茅が原の一つ家、四谷怪談、九尾の狐、安達が原の黒塚、道成寺、鍋島の化け猫など、岩手から熊本までの四十五話を、伝えられた形をなるべく崩さずに書き直し、おおむね東から西へ並べる。雨月物語や小泉八雲など書物に拠る話のほか近年の体験談も混じり、一部の話の末にはゆかりの寺社へ行く「順路」を付ける。