村娘と心中して死んだ狸
どんな伝承か
江戸中期、信州善光寺の近くで、百姓の評判息子と同じ村の農家の一人娘は互いに想い合っていたが、どちらも家を継ぐ身で親は許さず、娘には隣村からの婿取りが迫った。ある夜、娘の窓をそっとたたく恋人の声に誘われて裏山で落ち合い、二人はあの世で添い遂げようと、丘の松に互いの首をしごきで結んでぶら下がった。夜明け前に急用で通りかかった村人が、道端に倒れていた娘を介抱すると娘は息を吹き返したが、男の姿はなく、枝には狸が一匹ぶら下がって死んでいた。若者に化けた狸が情にほだされて道連れになったのだという。この騒ぎで二人は夫婦になることを許された。
原典より
ただ松の枝に狸が一匹、ぶら下って息絶えていた。—— 日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年))
『日本の妖怪伝説』は、小笠好恵が各地に伝わる奇談・怪談を読み物にまとめた伝説集で、序は昭和四十一年五月付である。浅茅が原の一つ家、四谷怪談、九尾の狐、安達が原の黒塚、道成寺、鍋島の化け猫など、岩手から熊本までの四十五話を、伝えられた形をなるべく崩さずに書き直し、おおむね東から西へ並べる。雨月物語や小泉八雲など書物に拠る話のほか近年の体験談も混じり、一部の話の末にはゆかりの寺社へ行く「順路」を付ける。