大水をそらした弁天の森の霊火
どんな伝承か
中村の弁財天のある森は、昔から弁天の森と呼ばれてきた。寛保のころ利根川が大水を起こし、村じゅうの田畑も家も濁流にのまれかけた。まさに流されようとしたその時、森から数えきれない霊火が現れ、天地を揺るがすような音を響かせて水面へ向かい、四方へ飛び散った。すると水の勢いがにわかに変わり、村は災いを免れたという。森には一株から何本もの幹を伸ばす老松があり、明治十二年に伊香保から帰る途中の皇太后が、珍しい松だから大切に守るようにと言葉をかけたが、今は枯れてしまった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
渋川市誌 第4巻 (民俗編)
『渋川市誌 第4巻(民俗編)』の伝説と昔話の冒頭を抜き出したものである。群馬県渋川市の飛び湯と午年の貝水、千が窪の蛇、弘法様の清水、渋川八名石・有馬五石などの石の伝え、祖母島のあずきとぎ、五居が島、二位寺山、歯黒稲荷などを、伝承の大字を添えて収める。利根川と吾妻川の合う町の、石と水と塚にまつわる伝えが中心である。