夜明けの川崎街道に立っていた白い女
どんな伝承か
25年ほど前の7月下旬、筆者の池波は友人の〇さんを乗せ、アユ釣りに向かうため夜明け前の川崎街道を日野方面へ走っていた。矢野口から稲城長沼を経て南多摩手前のY字路に至るまでのどこかで、ヘッドライトが道の真ん中に立つ女を照らした。髪は背中まで届き、白いワンピースか寝間着のような姿で、裸足だったように見えた。女は運転席側へ寄って小声ですみませんと言い、その声に悪寒を覚えた筆者は車を急発進させた。少し先には明かりのついた交番があった。ところが1ヵ月後にも翌年にも同じ道を注意して通ったが、女のいた場所も交番も二度と見つからなかったという。
原典より
徐行して近づいていくと、髪を背中まで伸ばした女の人が、片側1車線の道の真ん中にボーッと立っていた。—— 水辺の怪談 ベスト(つり人社) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
水辺の怪談 ベスト(つり人社)
『水辺の怪談 ベスト』は、釣り人たちが海や川や湖で出会った怪異の体験談を集めた本である。お盆の夜釣りでの金縛り、伊豆大島の釣り宿の離れ、渓流の滝壺や湖のボート、アユ釣りやマス釣りの遠征先の宿などを舞台に、エサ屋の店主・会社員・釣りライター・バスプロら十七人が、自身や仲間の体験をつづる。「海の章」五編と「川・湖の章」十二編の二部に分け、各編の冒頭に筆者の短い紹介を置き、四人は仮名で書く。