狐に化かされた下男の事例(詳細分析)
どんな伝承か
熊本県八代郡芝口村の豪家遠山の下男が狐に化かされたとされる一件の分析である。教育のない朴訥な下男は、日頃から「狐は人を化かす」「狐は必ず女に化ける」という話を聞かされ、半信半疑でいた。ある朝、使いの帰りに寂しい畑路で狐が飛び出すのを見た瞬間、「化かされるかも」という予期観念が閃き、たちまち自己催眠状態に陥ったという。あとは自己暗示の導くまま、女に招かれ駆け落ちするという幻覚に従って人騒がせを演じた。狐が尻尾を振るのを見たり、蠟燭や折詰を狐に取られたというのも、実は当人が自らそれを捨てているのだと説かれる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
變態心理と犯罪(中村古峽)
『變態心理と犯罪』は、中村古峽が著した変態心理学の論集である。二重人格、夢遊病、狐憑きや神隠し、催眠術を心理学の立場から解き、大本教・天理教・金光教などの神憑りや心霊術を迷信として論じ、迷信や二重人格のからむ大正期の犯罪事件の実話を収める。著者自身の被験者や大本教訪問の見聞を例に引き、変態心理の解説から催眠術、宗教批判、犯罪の実話へと進む順に並べる。