全生病院の道に立つ浴衣の女
どんな伝承か
ハンセン氏病の研究に打ち込んでいたある人物は、実験用の種をもらうため、東村山の全生病院によく通っていた。駅から遠く曲がりくねった昼でも寂しい道のりを、ある雨模様の晩、仕事で遅くなり歩いて帰っていると、駅へ通じる道の曲がり角に、髪を振り乱した浴衣姿の女が立っているのに出会い、驚いて逃げ出した。療養所を一周してもとの場所に戻ると女の姿は消えていたが、今度は駅への道が分からなくなり迷ううち、通りかかったトラックに拾われて助かった。研究所に戻ってからも人の気配を感じ、様子を見に行くと女子工員が服毒自殺を図っているところに行き合わせたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。