隣家の戸口に消えた戦死者の人魂
どんな伝承か
昭和一七年一一月三〇日か一二月一日の夜九時ごろ、私は北隣の酒倉の大ポンプで自宅の水槽へ水を注いでいた。七十ほどついたとき、東南の方からピカッと青い人魂が飛んで来て、ぐんぐん下降し、隣家村山氏の南の戸口に突き当たって消えた。妹に話し、他人には言うなと口止めした。その年が暮れて昭和一八年七月中旬、村山徳栄がガダルカナル島ボネギ河畔で米機の機銃弾により戦死した公報が届いた。人魂を見た日と符合するとは何という不思議だろうと思ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。