呉屋バンタの崖に燃える恋人の怪火
どんな伝承か
沖縄の美里の番所に勤める文子と、ある娘とが深く思い合っていた。文子は折々番所の土手に立ち、はるか南へ数十町離れた呉屋バンタの崖の上の松林に姿を見せる娘と、人には分からぬわずかな身ぶりで合図を交わして恋を育てた。ところがある日、文子が来いと手招きしたのを、娘は崖から落ちてしまえという合図と取り違え、憤って崖から身を投げて死んだ。これを見た文子も嘆いて同じ崖から落ちて死んだ。今も呉屋に見える怪火は、この二人の無念の炎だと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。