お岩稲荷のおめでたい縁起
どんな伝承か
四谷左門町の田宮家をめぐる怪談は、夫が妻のお岩を欺いて死に追いやり、その亡霊が一族と関係者を滅ぼす筋で知られる。だが岡本綺堂は、まるで違う言い伝えを挙げている。貧しさから夫婦は一度別れてそれぞれ奉公に出た。お岩は給金を貯める一方、奉公先の屋敷にあった稲荷へ毎日詣で、また夫と暮らせるようにと願った。事情を知った主人が世話を焼き、二人はもとどおりになる。お岩は神徳に感謝してその稲荷を自邸へ迎え、朝夕拝んだ。参拝したいと望む者にも快く門を開いたので、名のなかった社はいつしかお岩稲荷と呼ばれるようになったという。綺堂は、縁起そのものは終始めでたいのに、講釈師や狂言作者が勝手な怪談へ仕立てたのだと説く。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・昭和(怪談集成))
日本各地の幽霊・人魂・生霊の実話怪談を十章+幽霊外伝に分類して集成する。