仏壇の欄干を折った娘幽霊
どんな伝承か
火傷がもとで死んだ豆腐屋の娘は、翌日、桑折寺裏の墓地に葬られた。その夜まだ宵の口、見舞いに行って髪を羨ましがられた友の娘が家で親兄弟と語り合っていると、結い立ての髪の元結がぷつりと切れた。同じ夜の深更、桑折寺の本堂で帛を裂くような女の叫び声がひと声聞こえ、続いて本堂の中を走り回る乱れた足音がした。住職が小僧を起こして見に行くと、その日葬られた娘が走り回っている。二人が声を張り上げて読経すると、娘の幽霊はさすがに疲れてか姿を消した。それが七夜続いたという。今も桑折寺の仏壇の欄干には一カ所折れた所があり、その娘の幽霊が踏み折ったのだと伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。