口止めして明かした床下のオサキ
どんな伝承か
著者が群馬県多野郡の村々を歩くと、オサキの言い伝えは詳しく聞けても、オサキモチのことになると急に口を閉ざす人が多かった。N部落で、結婚のときに嫌われる家はあるかと尋ねると、ある人はこの部落にオサキモチはいないと答えたが、その場にはオサキモチの家の人が居合わせていた。翌日会ったN部落のK老人は、この部落にはオサキモチの家が二、三戸あり、その一戸の床下からオサキが出てくるのを自分は見たことがあると打ち明け、こんな話をしたとは誰にも言わないでくれと念を押したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの(吉田禎吾・民俗・憑きもの研究・1972年(昭和47年))
『日本の憑きもの』は、吉田禎吾が一九七二年に著した人類学の研究書である。キツネ・イヌガミ・オサキなどの憑きもの信仰と、それを家筋で伝える憑きもの筋を、島根・高知・大分などの村での調査事例と古記録をもとに取り上げ、アフリカやヨーロッパの邪術・妖術と比べて論じる。三章立てで、憑きものの正体と特色、憑きもの筋の形成と伝播、憑きものが村落社会で果たす働きを順に述べ、注とあとがきを付ける。