番頭と若妻の後に現れた館の怪物
どんな伝承か
野辺地の宿に現れる怪物について、同校生が語ったところによれば、その家を買い求めて旅館にした主人は六十を越えていたが、妻は二十五、六の若さであった。やがて主人は病みつき、妻は年若い番頭と妙な仲になった。主人は押し込められたまま、まともに食も水も与えられず、いつ死んだのか逃げたのか、老爺の影は見えなくなった。番頭は間夫から亭主の座に収まり、若い男女には都合よく運んだが、二、三年前からあの怪物が館の裏に現れるようになり、亭主は患いついて亡くなり、妻も気がふれて飛び歩くありさまになった。今その家を引き受けているのは、妻の妹夫婦だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
実説妖怪新百話
『実説妖怪新百話』は、著者名の記されない明治の怪談集である。本郷駒込曙町の世外庵に住む天保初年生まれの老翁の勧めで、門下生三十六人が百物語の会を開き、武家の妻の執念、化物屋敷、狐狸の化かし、前妻のたたり、漁師の幽霊の帰宅などを、自分の見聞や親から聞いた話として順に語る。冒頭の「百物語の開筵」で会の趣向を述べ、続いて会津・三河・江州・若狭・盛岡・八戸などを舞台にした話を題ごとに並べる。