妻の亡霊に化けた薄衣山の妖怪
どんな伝承か
宮城県登米郡上沼村の東北部、北上川の近くに薄衣山という岡があった。村の墓地で人家はなく、老松が茂って昼も薄暗い場所に、得体の知れない妖怪が出て人々を怯えさせていた。南方の弥勒寺村の米三という剣道の心得のある若者が退治を決意し、病臥する妻を残して銃を持ち、松の大木に登って見張った。すると家の方から提灯が近づき、若者二人が妻が死んだから帰れと叫ぶ。米三は答えずにいた。やがて葬列らしい灯が寺へ進み、鐘の音が響き、白いものが飛んで来て妻の亡霊が枝を登り恨み言を並べた。一刀のもとに斬り払うと血の跡は北上川まで続き、家では妻が無事であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ)
『宮城県史 民俗編』は宮城県の県史の民俗編で、ここに収めるのは茂木徳郎が執筆した章「妖怪 幽霊」である。山・道・木・水・海・雪・家など出現の場所による分類に沿って妖怪変化を論じ、幽霊とヒトダマ・死霊・生霊の観念を考えたうえで、県内の妖怪・幽霊・動物変化の伝承を郡・町村名を添えて集める。序説・本論・事例篇・参考の順に並び、序説では昭和二十四年の迷信調査と昭和三十年のNHK仙台中央放送局の調査にも触れる。