毒を知らせに夢枕へ立った鶏
どんな伝承か
元禄の末ごろ、遠田郡涌谷町で、伊達宗重の家臣に坂本宇兵衛という者がいた。夫婦に子はなく、飼猫と鶏を可愛がっていた。ある秋の夜更け、その鶏が時ならぬのにトキをつくったので、主人は不吉だといって殺し、近くの川に捨ててしまった。その同じ夜、鶏は坂本家の菩提寺の住持の夢枕に立ち、同家の猫が主人に毒を盛ろうとしているので夜中に鳴いて知らせようとしたのに殺された、和尚から委細を伝えてほしいと告げた。翌朝、住職が訪ねると、主人はまさに汁椀を手に取ろうとしていた。そこへ猫が飛び込んで椀に何かを落として走り去る。椀の中には黒ずんだ脂が浮き、毒蜥蜴の頭が入っていた。宇兵衛は深く恥じ、鶏を手厚く供養したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ)
『宮城県史 民俗編』は宮城県の県史の民俗編で、ここに収めるのは茂木徳郎が執筆した章「妖怪 幽霊」である。山・道・木・水・海・雪・家など出現の場所による分類に沿って妖怪変化を論じ、幽霊とヒトダマ・死霊・生霊の観念を考えたうえで、県内の妖怪・幽霊・動物変化の伝承を郡・町村名を添えて集める。序説・本論・事例篇・参考の順に並び、序説では昭和二十四年の迷信調査と昭和三十年のNHK仙台中央放送局の調査にも触れる。