鶏に頭をつつかれ命を落とした幼児
どんな伝承か
錦見上裏丁の旧玉乃氏の上隣の宅は借家になっており、二三の部屋に人が借り住んでいた。そのうちの某の妻がある日、二歳ばかりの児を抱いて庭前で小用をさせた。折から鶏がいたので、小用をさせるためにコロコロコロと呼んだところ、鶏はたちまち馳せ来て、いきなり小児の頭を一二度嘴で突いた。親がやれと追い立てたが既に及ばなかった。その疵の治療にかかったが癒えず、月余りしてこの病のために遂に死んだ。コロコロと鶏を呼ぶのは誰もが常にすることだが、このようなことは稀であり、子を育てる者は平生心得ておくべきだと記す。明治十年余りの事という。
原典より
錦見上裏丁旧玉乃氏/上隣ノ宅ハ、借屋トナシテ、二三ノ部屋二人、借居レリ。—— 岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年))
『岩邑怪談録』は、岩国藩士広瀬喜尚の怪談録に後人の増補と続録を合わせ、岩国徴古館が昭和五十一年に発行した資料集である。岩国周辺で人々が出会った化物・大坊主・生首・怪火・狐狸・天狗倒し・幽霊などの話を収め、藤田葆が編んだ『岩国沿革志』のうちの二冊を底本に、なるべく原文のまま新字に改めて載せる。広瀬の本録に、今田純一の追加、藤田の続怪談録と実事談・変死、静間密の付録五話を続け、巻末に語注を付す。