九歳で男児を産んだ少女
どんな伝承か
明治二十六年、長崎県南高来郡北串山村小田山の農家の娘は、九歳ながら背が高く発育もよかった。前年の八歳の秋ごろから腹が膨らみはじめたが、誰も妊娠とは思わず、両親は腹に水がたまる病ではないかと案じていた。ところが月日が過ぎ、九歳になったその年の七月に産気づいて男の子を産んだ。難産だったため赤子は亡くなった。身ごもった事情はわからなかったという。この娘は三歳のころから既に月経があったと伝えられ、筆者は江戸期の八歳の母と並ぶ早熟の例としている。
原典より
ところが、その九歳の幼女は、前年八歳の秋ごろから、お腹が膨れ出したが、さすがに妊娠とは誰も思わず、両親も脹満であろうと心配するうち、いつか月がたち、翌年九歳になった七月、産気づいて男子を産み落した。—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。