大塚町の私邸で向き合った福来と高橋
どんな伝承か
大正二年二月十三日の午後七時、小石川区大塚町七十番地の福来博士の私邸で、高橋宮二との会談がもたれた。世辞を言わない鉱山事業家と、世間と没交渉の学者である。応接室で向かい合ったまましばらく沈黙が続き、多津子夫人の取りなしでようやく笑顔が生まれた。高橋は、透視や念写の実験のたびに新聞に書き立てられるのは、学問を扱う者として不謹慎ではないかと切り出す。福来は同感だと答え、世間が騒げば能力者の心理に良くない影響が出ると言われても重ねて頷いた。売名ではないかと問われると、それは違うと居ずまいを正し、長尾家の実験でも新聞発表は戒めたのだと語り出した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
念写発見の真相(山本健造・念写・超心理研究・1980年(昭和55年))
『念写発見の真相』は、飛騨に住む山本健造が著した福来友吉の伝記と学説紹介の書で、はしがきは昭和五十五年十一月三日付である。念写を発見した福来の幼少期から、東京帝大での透視・念写実験と追放、宣真女学校長・高野山大学教授の時代、仙台での晩年までをたどり、著者による高山市の福来博士記念館建設の経緯や六次元の原理を述べる。全十五章からなり、第二章に福来の論文「弘法大師の御霊影」を再刊のことばとともに収める。