柊の根から出た鬼瓦と下女の悪夢
どんな伝承か
文化二年八月、江戸の下谷に住む画家谷文晁の家で、下女が毎晩鬼の夢にうなされて騒いだ。思い当たることがあった文晁は、夜の用足しに便所まで行かず途中で済ませているのではないかと下女に問い、庭の出口の柊の根もとでしているのだろうと言い当てた。下女は、怖くて便所まで行けないのでそこでしていると白状した。文晁が柊の根もとを掘らせると奈良の二月堂の鬼瓦が出てきたので、洗い清めて床の間に置いた。それからは下女が悪夢に襲われることはなくなったという。
原典より
そこで文晁は命じて柊の根本を掘らせて見ると、奈良の二月堂の鬼瓦が出たので、夫を洗ひ淨めて床の上に置いて見た。—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談)
『幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵』は、岡田蒼溟による霊怪の事例集である。祟る石、出雲の瀧姫行者、神西湖の妖怪、但馬の抜け首、黄金の精、海の牛鬼、天狗などの怪異を、著者自身の見聞や知人の談話、古い文書からの移載によって集め、明治・大正期の出雲や松江周辺の事例を多く含む。項目によっては【解題】や註を添え、事例の後に「第二編」と附録の「天狗考」を続け、巻末の「解説の欄」で生霊・疫神・物体の飛来などを心霊研究の立場から論じる。