工事中の橋に立つ子を抱いた老婆
どんな伝承か
堺に住む山田という四十一歳の男性が、十七、八年前の熊本での体験を語った。白川の大水害で多くの橋が流され死者も出た二年半ほど後、土建業をしていた彼は仕事の行き帰りに白川の小貝橋を渡っていた。夜十二時ごろ、残業帰りの五人で三輪のオートバイに乗り、まだ片側通行の工事中の橋にかかると、ライトの中に子供を抱いて後ろ向きに立つ着物姿の老婆が浮かんだ。邪魔だと怒った助手が降りて近づくと、老婆は目の前で消えた。五人全員が見たため警察に届け、新聞にも出て見物人が集まったが、二度とは現れなかったという。
原典より
ところがね・・・・・・びっくりしたことに、それまではっきりと見えていた婆さんの姿が、全然見えなくなってしまったんです—— お化けについてのマジメな話(平野威馬雄・1974年(昭和49年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けについてのマジメな話(平野威馬雄・1974年(昭和49年))
『お化けについてのマジメな話』は、平野威馬雄が昭和四十九年に著した幽霊とお化けをめぐる随筆である。自ら主宰する「お化けを守る会」に寄せられた体験談や、大阪の毎日放送のラジオ番組で聴取者が電話で語った話を軸に、前世や霊媒・降霊実験など海外の心霊研究、井上円了の妖怪論、古い記録に見える犬神などの憑きものを取りあげる。体験談から死後の世界、お化けを呼ぶ方法、昔のお化けへと進む八章立てで、巻末にあとがきを置く。