死後に作られたサイン帳に残る画家の名
どんな伝承か
歌手の淡谷のり子が語った、終戦直後の夏の話。山口県宇部市の旅館で蚊帳をつって寝ていると、夜中の一時ごろ、蚊帳のまわりを誰かが歩いている。見ると白絣の着物を着た知り合いの男で、枕もとに座って手を伸ばしてきたため、悲鳴をあげて気を失った。翌朝、女中にサインはしてくれたかと聞かれ、違い棚のサイン帳をめくると、その男の名が記されていてぞっとした。男は亡くなる少し前までその部屋に泊まっていたが、帳面は彼の死後に作った物だという。男はかつて彼女がモデルをしていた画家で結婚を望まれたが、彼女が裏切った相手だった。
原典より
ふとめくったら、その人の名まえが書いてあったので、ゾッとしました。—— お化けについてのマジメな話(平野威馬雄・1974年(昭和49年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けについてのマジメな話(平野威馬雄・1974年(昭和49年))
『お化けについてのマジメな話』は、平野威馬雄が昭和四十九年に著した幽霊とお化けをめぐる随筆である。自ら主宰する「お化けを守る会」に寄せられた体験談や、大阪の毎日放送のラジオ番組で聴取者が電話で語った話を軸に、前世や霊媒・降霊実験など海外の心霊研究、井上円了の妖怪論、古い記録に見える犬神などの憑きものを取りあげる。体験談から死後の世界、お化けを呼ぶ方法、昔のお化けへと進む八章立てで、巻末にあとがきを置く。