金縛りの中で抱いた亡き恋人の幽霊
どんな伝承か
山口県宇部市の小森浩さんは、二十七、八歳のころ、金縛りの中で亡くなった恋人の幽霊に出会った。それは幽霊というより生身の人そのもので、体温もあれば息づかいも感じられた。動けないまま彼女をじっと抱いていると、その髪が頬に触れていたという。もう一度あの感覚を味わいたいと願った彼は、幻でもかまわないと、同じ夜を再現する方法を探しはじめた。金縛りが鍵だと考えたが思うようにはならず、やがて呼吸を止めることを思いつく。身動きせず無心で息を止めることを繰り返すと、紫色の棚が現れて開き、体がしびれ、稲妻のような光がひらめいたという。本人の話では、この体験のいちばん初めには体が金縛りのように固まり、耳鳴りに似た「ガー」という大きな音が途切れずに響く。そこを意志の力で振りほどいたとき、不思議な体験が始まるのだという。
原典より
それは幽霊というより、生きた人間そのままだった。—— 臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション)
『臨死体験(立花隆)』は、立花隆が著したノンフィクションである。一九九一年三月放送のNHKスペシャルのための取材を出発点に、日本と欧米の体験者の証言、キュブラー・ロスやムーディら研究者への聞き取り、「文藝春秋」連載中に寄せられた体験談を収める。体外離脱、光の体験、文化による体験の差、感覚遮断や脳の仕組みを章ごとに論じ、末尾で現実体験説と脳内現象説を比べたうえで、著者は基本的に脳内現象説に立つと述べる。