激痛の果てに現れた女の仏
どんな伝承か
札幌市のT・Jは、一九四三年一月二十四日、職場のスキー大会の帰りに焼酎を飲みながら札幌桑園駅から列車に乗った。暑くなってデッキで体を冷まそうとしたところ滑って転落し、荷物が車体に引っかかってしばらく引きずられ、転轍機にぶつかって止まった。鉄道病院に運ばれ、頭を十七針縫い、顎も目も足も背骨も損傷した。三日目の夜、激痛の中で目の前が白黒の砂嵐のようになり、やがて暗闇に黒い粒が現れて光り出し、弧を描いて飛び交った。その一筋の光が太くなり、美しい女の仏となって微笑んで立っていた。祈るうちに仏は消え、翌日には激痛が嘘のように引いていた。
原典より
具体的に日本の体験例を示してみよう。—— 臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション)
『臨死体験(立花隆)』は、立花隆が著したノンフィクションである。一九九一年三月放送のNHKスペシャルのための取材を出発点に、日本と欧米の体験者の証言、キュブラー・ロスやムーディら研究者への聞き取り、「文藝春秋」連載中に寄せられた体験談を収める。体外離脱、光の体験、文化による体験の差、感覚遮断や脳の仕組みを章ごとに論じ、末尾で現実体験説と脳内現象説を比べたうえで、著者は基本的に脳内現象説に立つと述べる。