紀ノ国坂の幽霊は逃げた女郎
どんな伝承か
維新のころ、ある武士が夜中に赤坂の紀ノ国坂を通りかかった。暗がりに提灯も持たず白い着物の人影が立っている。ここで怯えれば怪談に尾ひれが付くところだが、この武士は化け物なら一刀のもとに斬り捨てようと決め、柄に手をかけて間合いを詰めた。すると相手のほうから、道を教えてほしいと声をかけてきたので、今度は別の意味で驚いた。近寄って事情を聞けば、幽霊の正体は新宿の女郎で、楼主の仕打ちに堪えかねて夜中にここまで逃げてきたのだという。幽霊の正体見たりという類の幻滅は昔から実に多いと筆者は説いている。
原典より
ある武士が維新の際に、赤坂の紀ノ國坂を夜中に通つたら、其の深縹に一人の白い着物の人が無提灯で立つてをつた。—— 心霊現象の文献と其科学的研究(心霊学研究会・心霊研究・死後の生活) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊現象の文献と其科学的研究(心霊学研究会・心霊研究・死後の生活)
『心霊現象の文献と其科学的研究』は、欧米の心霊研究と死後の生存をめぐる論説を集めた解説書である。ロッジやマイヤーズの心霊研究、霊媒と交霊、死後の生活を科学・医学・仏教・キリスト教の立場から論じる文章、輪廻転生、幽霊と幻覚、透視・テレパシー、神憑り、霊媒ユーザビアの実験、霊能を装う詐術、自動書記や棒占いを扱う。「心霊論者の主張」「死後の生活」「不思議の現象と心理研究」「驚異の心霊現象自動現象」の四篇に分け、各節を多くの小見出しで区切る。