丹波倉橋山に現れた件の瓦版
どんな伝承か
件という名が初めて現れるのは、天保七年と記された瓦版らしい。それによれば、天保七年十二月、丹波国の倉橋山の山中に、体は牛で顔は人に似た件という獣が現れた。この獣は宝永二年の十二月にも出たことがあり、その翌年から豊作が続いたと古い書物にあるという。件の字は人偏に牛と書き、正直な心の獣であるから証文の結びに『件の如し』と書くのだと説く。そしてこの絵を貼っておけば家は栄え、疫病にもかからず、あらゆる災いを逃れて大豊作になる、まことにめでたい獣だと結んでいる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪伝説奇聞(東雅夫・2005年(平成17年))
『妖怪伝説奇聞』は、東雅夫が二〇〇五年に学習研究社から刊行した妖怪伝承地の探訪記である。稲生物怪録の木槌、クダン、牛鬼、塵輪、ナメラスジ、八幡の藪知らず、鬼の骨、蛇骨、鍋島の怪猫、児啼爺などを追い、中国・四国・九州ほか各地の寺社や旧家を訪ねて遺物と伝承を確かめる。月刊誌「ムー」の連載「日本伝説紀行」の十二章を三つのカラーグラビアで区切り、巻末に草双紙『鍋島猫騒動』の復刻を添える。