生き血を吸う猫石の精
どんな伝承か
江戸の後期から明治にかけて、岡崎・有馬・鍋島の三つは三大怪猫譚として芝居や講談で広く知られた。このうち岡崎のものは、『四谷怪談』で名高い鶴屋南北の『独道中五十三駅』に組み込まれた一段に由来する。舞台となるのは東海道の岡崎丸子宿で、そこにあるという猫石に宿った精が、女の生き血を吸って十二単をまとった老女の姿に化ける。有馬と鍋島の二つが大名家のお家騒動を下敷きにするのに対し、こちらは道中物の趣向として仕立てられた怪異であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪伝説奇聞(東雅夫・2005年(平成17年))
『妖怪伝説奇聞』は、東雅夫が二〇〇五年に学習研究社から刊行した妖怪伝承地の探訪記である。稲生物怪録の木槌、クダン、牛鬼、塵輪、ナメラスジ、八幡の藪知らず、鬼の骨、蛇骨、鍋島の怪猫、児啼爺などを追い、中国・四国・九州ほか各地の寺社や旧家を訪ねて遺物と伝承を確かめる。月刊誌「ムー」の連載「日本伝説紀行」の十二章を三つのカラーグラビアで区切り、巻末に草双紙『鍋島猫騒動』の復刻を添える。