鰹を盗んだ化け猫と南瓜のつる
どんな伝承か
南伊豆、子の浦のある漁村での話。鰹の漁期になると船主の五兵衛は網元の加助の家へ泊まり込み、荒くれ男たちを指図して漁をした。ある年、毎晩鰹が盗まれて女中が疑われたが、夜通し見張った五兵衛は、犬ほどもある大猫が魚をくわえて行くのを見た。猫はその後も執念を残し、五兵衛が泊まる船底へ現れて、船頭の太吉に船板で頭を割られて死んだ。翌年、加助の家の裏の畑に、種を蒔いた覚えのない南瓜が異様に早く実った。掘ってみると、猫の死骸の牙をむいた口から太い南瓜のつるが出ていたという。
原典より
なんと、そこには、まだ体のぬくみが感ぜられるような猫の、目をつり上げた死骸と、牙をむいた真赤な口の中から出ている太い南瓜のつるが、人人の目の前にあらわれたのである。—— 日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年))
『日本の妖怪伝説』は、小笠好恵が各地に伝わる奇談・怪談を読み物にまとめた伝説集で、序は昭和四十一年五月付である。浅茅が原の一つ家、四谷怪談、九尾の狐、安達が原の黒塚、道成寺、鍋島の化け猫など、岩手から熊本までの四十五話を、伝えられた形をなるべく崩さずに書き直し、おおむね東から西へ並べる。雨月物語や小泉八雲など書物に拠る話のほか近年の体験談も混じり、一部の話の末にはゆかりの寺社へ行く「順路」を付ける。