帆柱が自ら渡った石廊権現
どんな伝承か
石廊崎の鼻先、高さ十丈ほどの切り立った巖山を石廊山という。その中腹に海上守護の神を祀る石廊権現の祠がある。祠の土台は帆柱で、岩と岩の間に横へ渡してあり、床板の隙間から下をのぞくと底の知れない淵が広がり、砕けた波が雨のように飛び散って正視できないという。険しさのため直登できず、参詣者は山上の燈台のあたりから蛇のような細い道を峰づたいに下る。昔、播磨の商船がこの沖で颶風に遭って転覆しかけたとき、船の者が権現を伏し拝み、助かったなら帆柱を寄進すると誓った。風はやみ波は静まり、船の者は帆柱を折って海へ沈めた。するとその夜、帆柱はひとりでに海を渡って窟へ横たわり、土地の人は驚いてこれで祠を構えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。