砕けて光った石の観音と盤台寺
どんな伝承か
盤台寺の本尊はお乳の神様で、一尺八寸ばかりのつぎはぎだらけの石ころである。元亀天正のころ、鞆の近くの江の浦という漁村に次郎右衛門という貧しい漁夫が住み、常に念仏を唱える信仰家だった。ある夜、白髪を蓄えた熊野明神のような老翁が夢に現れ、奇特な男だから霊物二品と三山という姓を授けると告げた。目覚めると枕元に双六の賽と鹿角の矢一双が置いてあった。熊野三山へ詣でて帰り、網を入れると二尺余りの石ころが掛かったので海へ返した。もう一度入れると、その石が三つ四つに砕けて四方に光を放って上がり、継ぎ合わせると観音の姿になった。背に付いた貝殻を取ると古銭が三十文余り出たという。そこで名僧建智に頼んで建立したのが阿伏兎の大悲閣だと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。