伊勢代参人甚八の家の藪に降った御札
どんな伝承か
慶応三年七月二十四日の昼八ツ時、三河国額田郡藤川宿の東町にある甚八の家の裏の藪のなかへ、伊勢神宮の御札が降った。この甚八はその年の伊勢代参人であった。町ではこの日から同月晦日まで御祭を行っている。明星院文書「降臨御祓諸牘覚帳」に見える記事で、吉田宿の御札降りが西へ波及した最初の事例にあたる。藤川宿ではその後一か月以上の空白があり、本格的な御札降りが始まるのは九月三日からであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
ええじゃないか始まる(田村貞雄・1986年(昭和61年))
『ええじゃないか始まる』は、田村貞雄が一九八六年に著した幕末の民衆運動「ええじゃないか」の研究書である。慶応三年に三河から遠江・駿河へ広がった御札降りの発端を、牟呂村の「二夜三日正月」、御鍬百年祭、吉田宿の助郷騒動、秋葉信仰との関わりから、村方の文書や日記、市町村史の史料をもとに追う。はしがきに続く八章で発端から波及、仕掛人をめぐる諸説、祭の後の「代替わり」までを論じ、主な史料はその原文を別組で示す。