赤い灯に浮かんだ十二の手首
どんな伝承か
戦後、筆者は竹内・津田・荻原といった霊媒の実験をいくつも見た。長田幹彦の家で津田霊媒を招いたときには、読売新聞の記者を含め大勢が集まり、四谷署の元署長が犯人を縛る要領で霊媒を縛り上げた。あとで確かめても動いた跡はない。もっとも驚いたのは、カーテンで覆われた箱の右肩あたりから、赤い布を巻いた懐中電灯が明滅するたびに手首が現れたことである。指の長い手、筆者と同じく手のひらが広く指の短い手など、光るたびに入れ替わり、十二通りほど出た。実験のあと写真が示され、その場にいた者たちが自分の手だと次々に認めたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ)
『私は幽霊を見た――現代怪談実話傑作選』は、東雅夫が編んだ怪談実話のアンソロジーで、メディアファクトリーのMF文庫ダ・ヴィンチの一冊である。平山蘆江・火野葦平・佐藤春夫・徳川夢声・遠藤周作・柴田錬三郎から石原慎太郎・新倉イワオ・稲川淳二まで、作家や文化人が自ら見聞きした幽霊や怪異を書いた文章を集める。目次には二十三篇と編者解説が並び、水木しげる・山田野理夫・桝井寿郎の座談「怪談詮議」や中岡俊哉「イタコの謎を追う」の抄録も含む。