月夜の海で漁船を乗り切った土船
どんな伝承か
沖家室島の漁夫が、月の良い夜に沖で釣りをしていたところ、夜半から青北の風が吹き出し、強まる一方なので船を漕いで帰り始めた。すると一艘の土船が向こうから一直線にこちらへ突き進んでくる。大声で叫んでも相手には届かないらしく、月光の中で白い波を立てて迫り、あっという間に漁船は乗り切られてしまった。どれほど時間がたったのか、気がつくと夜明け近くで、漁夫は青黒く波立つ広い海を青島の近くで漂っていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。