竹島沖で針路を合わせてくる汽船の幻
どんな伝承か
五月の、むしむしする曇った夜のことだった。周防灘の竹島の沖を、ゴヘダ船で大阪へ向けて走っていた。夜の一時頃、十二時に交替して舵を握っていたが眠気に困っていた。ふと向こうを見ると汽船がやって来る。妙に船の姿がはっきりしており、こちらが少し向きを変えると相手も同じ方へ向ける。船幽霊だと思い、下手をすると岩へ乗り上げるので真っ直ぐ進むと消えた。安心しているとまた見える。構わなければ消えると思って正しい進路を行くと、まさに衝突という所でぱっと消え、それきりであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。